孤高の淵に立たされた軍人の男の唯一の支えは、亡き妻同様つれそった愛車フォード・グラントリノ。
男の心を開いたのは隣に住むモン族の人々。
無骨な男は人生の終焉を向かえ、何が出来るのだろうか・・・

コワルスキー(クリント・イーストウッド)は、フォードの自動車工歴50年。
彼は偏屈者であるが故に、妻の葬儀の席では孫娘や息子たちに息子たちには愛想を付かされてしまい、神を信じず誰にも心を許さない日を送っていた。

彼の唯一の楽しみは愛車グラントリノを眺める事。
ある日彼のお宝を興味本心で隣にすむモン族の少年タオ(ビー・ハン)が盗もうとした。
金もなく学校に行けないタオは不良グループに車を盗むように言われたのだ。

コワルスキーはタオに絡む不良グループを一網打尽にすると、翌日タオの母や姉スー(アーニー・ハー)が御礼に訪れる。
コワルスキーは、次第に今までにない家族愛を感じる様になるのだが・・・

原 題 GRAN TORINO
製作年 2008年
製作国 アメリカ
監 督 クリント・イーストウッド
脚 本 ニック・シェンク
製作総指揮 ジェネット・カーンティム
撮 影 トム・スターン
音 楽 カイル・イーストウッド
出 演 クリント・イーストウッド(ウォルト・コワルスキー)、ビー・ヴァン(タオ)、スー(アーニー・ハー)、クリストファー・カーリー(ヤノビッチ神父)、ブライアン・ホウ(スティーブ)、ドリーマー・ウォーカー(アシュリー)、コリー・ハードリクト(デューク)


人間、血縁が濃すぎる、もしくは親戚縁者があまり近くに居すぎるとうまくいかないという事があります。
この映画の主人公のコワルスキーもそうだったのかもしれません。

彼が頑なな性格になったのは、朝鮮戦争での出兵がきっかけです。
戦場で戦う人間と本国で待つ人間との間に埋めたくても埋まらないギャップがあるというシチュエーションは『アメリカン・スナイパー』、『ディア・ハンター』など数々の名作で描かれています。
それでもイーストウッド演じるコワルスキーは、亡くなった奥さんが、おそらくそんな不器用な彼と親戚縁者を繋ぎとめていたのでしょう。

それがなくなったのですから、子供たちは放れていって当然ですし、コワルスキーもそんな事はわかっていて『俺は嫌われ者だが、女房は世界で最高だった』と毒づくのです。

でも本当は子供たちに自分自身を認めて貰いたいという願いは持っていて、そこにタオたちモン族が彼の目の前に現れたのです。

コワルスキーは、失われた自分の人生を取り戻すかの様に、モン族の彼らの役にたとうとします。
本当ならこれらの事は自分の息子たちにするべきだったのですが、気がつくと彼は仕事一辺倒となり息子たちの心は彼から離れ出来なかった事ばかりだったのです。

タオとスー役に実際のモン族の末裔をキャスティングしているイーストウッドのこだわりは流石。
クライマックスにコワルスキーは彼らに何を残せるのか、考える事となります。
そして穏やかなラストに繋がっていく所は、イーストウッドの手腕が光ると思える一作です。

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