男はかつて業界屈指の彗眼を誇ったスカウトマン。
キャリアを賭けて旅立つ傍らに居るのは、自分と違う道を歩んだ娘。
デジタル、SNS時代に一石を投じるイーストウッド渾身の一作。

アトランタ・ブレーブスのスカウトマン・ガス(クリント・イーストウッド)は、かつて敏腕と言われたものの今は腕も衰え気味。

彼を雇うオーナーのピート(ジョン・グッドマン)はコンピューター分析専門のスカウトマン・フィリップ(マシュー・リラード)をサブとして置いているが、いざという時の決定権はガスに委ねていた。

私生活に支障をきたす様になったガスを心配しピートは、今期期待の星と言われている高校生・ボー(ジョー・マッキンシル)のスカウトに、ガスの娘で弁護士のミッキー(エイミー・アダムス)を同伴させるのだが・・・

原 題 TROUBLE WITH THE CURVE
製作年 2012
製作国 アメリカ
監 督 ロバート・ロレンツ
製作総指揮 ティム・ムーア
脚 本 ランディ・ブラウン
撮 影 トム・スターン
音 楽 マルコ・ベルトラミ
出 演 クリント・イーストウッド(ガス)、エイミー・アダムス(ミッキー)、ジャスティン・ティンバーレイク(ジョニー)、マシュー・リラード(フィリップ)、ジョン・グッドマン(ピート)、ジョー・マッキンシル(ボー)、スコット・イーストウッド(ビリー)、ジェイ・ギャロウェイ(リコ)


『マネーボール』が統計学を基本に、選手の素質を見出していくものであるならば、この映画は地道に選手の素質に時間と手間暇をかけて向き合っていくアナログな映画です。

映画はガスがスカウトしてきた選手ビル(スコット・イーストウッド)の成績が振るわなかったり、ガスが宅配ピザに渡す釣銭の額を大幅に間違える所から始まります。

オーナーは一抹の不安を抱えつつも彼の娘を同伴させ、チームのこれからがかかったスカウトにガスを出向かせるのです。

その先で、ピッチャーとしてガスがスカウトし、現在はスカウトマンとなったジョニー(ジャスティン・ティンバーレイク)が現れます。
彼もまた同じ選手ボー(ジョー・マッキンシル)に目を付けているのです。
娘のミッキーは、昇進がかかった仕事を手掛けている最中なので、本心が気が気でありません。

どの球団もボーこそが、今季一番の目玉と目をつけ史上指折りの大リーガーになるとベタホメな中、ガスだけが、ある事に気付きボーの弱点を見抜きます。

五感、第六感、過去の経験をフルに引き出さなければいいスカウトマンと言えないという所をイーストウッドが齢82歳にして魅せる所が最大の見どころです。

監督ロバート・ロレンツは第二班、助監督としてのキャリアを積み、『ブラッドワーク』でクリント・イーストウッドに才能を見出されて以来『ミリオン・ダラー・ベイビー』、『硫黄島からの手紙』、『グラン・トリノ』、『J.エドガー』とイーストウッドとコンビを組みながら、数々の受賞作を世に送り出し、イーストウッドから唯一の弟子と認められています。

まだまだイーストウッドは銀幕引退出来そうにないですね。

野球映画は数多くあるのですが、この映画は他の野球映画の様に選手や元選手に焦点をあてたものでもなく、成功を収めている野球ビジネスマンでもないという点から、似ている映画は必然的に違ったものとなります。

その点を考えると、この映画と似ているといえば『ザ・エージェント』になるかもしれません。
金満主義の会社に愛想をつかし出ていったエージェントをトム・クルーズが演じ、その後も引き抜いた選手に四苦八苦するというものです。

過去の栄光が邪魔しているスポーツエージェントやスカウトマンという立場から、金銭や名誉ではなく、スポーツ選手にとって必要な事は何なのかを見つけだす事がこれらの映画の見どころとなります。

「人生の特等席」を鑑賞する